いささか旧聞になってしまいましたが、面白いニュースを見つけました。 "菌類でかもした木材" で作られたバイオリンが、ブラインド・テストでストラディバリウスより高い評価を勝ち取ったのだそうです。
Fungus-treated Violin Outdoes Stradivarius
(Science Daily: News & Articles in Science, Health, Environment & Technologyより)
こういうニュース、変な楽器好きにはたまりません。フィドル弾きの私には関係のない話ですが、こういう面白いことはどんどんやってもらえると楽しくていいです。「○○処理した楽器がブラインド・テストでストラディバリウスに勝った!」というニュースは別に大して珍しくありませんが、菌類(要するにキノコ)を使ったというのが強烈なチャーム・ポイントです。
比較対象となったのは2000万ドルのストラディバリウス、普通の木材でつくられたバイオリン2本、菌類で処理された木材( "fungally-treated wood" )で作られたバイオリン2本。ストラディバリウス以外はすべてスイス人の製作者Michael Rhonheimerの作品です。評価の結果は、菌類で処理したもののうちより長く(9か月)処理した "Opus 58" (作品58)がダントツ一位、次点がストラディバリウスだったということです。
周辺情報をあさってみたところ、菌類と木材の組み合わせも以下の2種類だったようです。
- 菌類:Physisporinus vitreus、木材:オウシュウトウヒ
- 菌類:Xylaria longipes、木材:スズカケノキ(シカモア)
菌類はともに和名がないもので、ヨーロッパでよく見られる木材腐朽菌だそうです。後者はおそらく見た目のせいでしょう、 "Dead Moll's finger" (死んだ情婦の指)というちょっとホラーな別名があります。
菌類が楽器の品質を高める仕組みは、菌類の作用により細胞構造が変化し、木材の均質性が高まって音響特性を向上させると説明されていました。通常の木材と比較すると、より温かみのある、まろやかな音になるのだそうです。おそらく菌類が細胞壁の材料である糖質をいじるのでしょうが、処理前と処理後で顕微鏡写真を比較したらどんな風なのか、虫食いみたいに不均等に作用しないための工夫はどんなものなのか、菌類の作用が木材の経年変化にどう影響するかなど、興味が尽きないところです。幕張あたりでよく恐竜展をやっていますが、あんな感じで来日してくれないものでしょうか。
記事中ではストラディバリウスの音色の秘密のひとつとして、1645~1715年の小氷河期の影響で木目の締まった木材が手に入ったことがあげられています。明確には書かれていませんが、菌類で処理することでストラディバリウスが用いたのに近い性質をもった木材を作ることができる、だから音が良いのだと言いたいようです。
Michael RhonheimerさんがAntonio Stradivariusを超える製作者で、菌類で処理したものの方が音がよかったのはただの個体差、といった身も蓋もない事態の可能性については、一切触れられていません。
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